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自動車
千葉大学大学院 自然科学研究科修了
日産自動車株式会社 技術開発本部 IT&ITS開発部 企画グループ
大杉 優幸 (おおすぎ まさゆき)氏

2007年11月東進タイムズ掲載

より安全な交通環境の実現 切実な願いが自動車開発の原動力

見えにくい場所にいる歩行者をドライバに知らせ、 交通事故の低減を目指す

 自動車メーカーの仕事は、商品企画、開発、生産、マーケティングなど多岐に渡ります。更に、開発の仕事一つをとっても、10年以上先を見据えた先端技術や交通社会の研究、5~10年先の比較的実用化が近い技術の先行開発、数年先に発表される次期型車両を開発するプロジェクトなど、さまざまな仕事があります。その中で、私はITS(高度道路交通システム:最先端の情報通信技術を用いて人と道路と車両とを情報でネットワークすることにより、交通事故、渋滞などの道路交通問題を解決する新しい交通システム)分野の先行開発を担当しています。

 現在取り組んでいるのは、クルマと歩行者との事故の低減を目指すシステムの開発です。皆さんは携帯電話で活用されているGPS(全地球測位システム:人工衛星を利用して自分のいる場所を割り出すシステム)機能をご存じだと思いますが、私が開発しているシステムでは、このGPS機能を利用します。具体的には、クルマに搭載されるナビゲーションと歩行者が持つ携帯電話を通信させ、ドライバに注意が必要と判断した場合、ナビゲーションの画面表示と音声で「この先、歩行者に注意してください」とドライバに知らせます。今は先行開発段階ですが、システムが実用化すれば、「見えにくい場所にいる歩行者」を事前にドライバに知らせることができるようになります。

 私がこの仕事に熱意を持って取り組んでいるのは、「社会の役に立つことがしたい」、「社会の負の部分を減らしたい」という想いがあるからなんです。その中でも、過去に事故で親戚を亡くした経験から、交通事故を減らしたいという想いを特に強くもっています。

仕事を通して成長することの喜び

 この仕事で特にやりがいを感じることは二つあります。一つは、自分で考えたモノを、実際に自分の手で動かして確認できることです。具体的には、お客様の要求や歩行者事故多発地点の調査結果を踏まえて、こうすればうまくいくのではないかという仮説を立て、それを実現するモノをつくり、実際に動かしてみたときにやりがいを感じます。

 今年3月から、神奈川県内の歩行者事故多発地点で、開発したシステムの効果を検証するための実験を行っています。一言で「見えにくい場所にいる歩行者を事前にドライバに知らせる」といっても、時速40kmで走行している場合に、どの位置にいる歩行者を、どのタイミングでドライバに伝えれば安全運転に効果的か、またどのような表示や音声で伝えれば分かりやすいのかなど、いろいろなパターンを当てはめて実験を行います。その実験結果から、当初に自分が立てた仮説が正しかったのかを考えながらデータを収集し、検証しています。

 この路上実験を行うためにはさまざまな下準備が必要でした。まず、実験を安全に行うために必要な安全監視体制、緊急時の対応方法などを資料にまとめ、警察署に道路使用許可を取ります。その後、地域にお住まい方々に実験へのご理解をいただくため、一軒一軒ご挨拶にうかがいます。最初は、ここまで自分でやらなければいけないということに驚きましたが、自分が開発に携わったシステムの効果検証から、それに至るさまざまな備まで一貫して携われることで、やりがいと共に大きな達成感が感じられますね。

 もうひとつの大きなやりがいは、仕事を通して物事の見方や姿勢、使える能力やスキルを学べ、成長していけることです。
例えば、担当しているシステムの開発初期段階の頃のことです。まずはお客様の「こういうモノがほしい」「こういう不安がある」というような要望を調査し、明快で簡潔な言葉で漏れなく一覧表にまとめます。そして、それを基にどのようなシステムを作れば良いかを考え、自分の考えた過程を共同で開発しているエンジニアに説明し、議論をして開発の方針を固めていきました。この経験を通して、全体を見据えて抜けがないように考えるモノの見方、文章表現の仕方、相手に納得してもらうコミュニケーションの取り方などを学びました。

自動車エンジニアに求められる力

 自動車エンジニアとして求められる力は、物事を複数の方向から考える力ではないでしょうか。性能、環境、安全、コストなど、クルマづくりには相反する要素がたくさんあります。例えば、高い走行性能を実現しながら燃費も良くしたい、更に、安全も確保しなければならないといったことがあります。このように、一つの考え方に偏らず多方面から考えられる力、複数の観点から考えて行動を起こせる力が必要です。私が担当しているシステムの開発で言えば、「見えにくい場所にいる歩行者」を事前にドライバに知らせることによって安全を向上させられる一方、ドライバがシステムに頼り過ぎることによって、本来すべき安全確認を怠るという過信を生む可能性があります。

 このような自動車エンジニアに求められる複数の観点から考える力のベースには、高校で学んだ物理学の考え方があると思います。例えば、物理公式の導出過程をゼロから考えたり、物理の法則を日常生活の中の現象と絡めて考えたりすることによって、自ら論理を積み上げていく能力や、発生した現象の本質的な原因を見極める能力が磨かれます。これらの能力は、相反する要素にうまく折り合いをつけ、さまざまなお客様の要求に応えるクルマづくりの中で活かすことができます。自動車エンジニアを目指す高校生の皆さんには是非、物理学を深く学んでもらいたいですね。

※文中敬称略。所属・役職等は取材当時のものです。

	
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