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国際弁護士
慶應義塾大学 法学部法律学科
ビンガム・マカッチェン・ムラセ外国法事務弁護士事務所 坂井・三村・相澤法律事務所(外国法共同事業)
土屋 智恵子 (つちや ちえこ)氏

2008年09月東進タイムズ掲載

国による法律や文化の違いを理解し、問題解決へと導く! 世界を舞台に活躍する「法」のエキスパート

国際的な取引を円滑に進めるための法的チェック

 高校生の皆さんは「国際弁護士」にどのようなイメージを持っているでしょうか。実は「国際弁護士」という資格は存在しません。国際的案件を多く担当する弁護士を称して「渉外弁護士」または「国際弁護士」と呼ぶ ことがあるのです。

 現在、私が担当している主な仕事は、国をまたいだ企業間の取引に関する法的な相談、契約内容チェック、契約交渉、国際的企業再建などです。例えば、海外の企業が日本でビジネスを行う場合等に、日本の法律についてアドバイスを行ったり、日本企業とその取引相手である外国企業との間の契約書について問題点がないかどうかチェックして交渉したりすることなどです。

 北米との仕事が多く、現地に出張する場合もありますが、主にメールや電話を利用して仕事を進めています。時差があるので、朝8時から国際電話会議という日もありますし、夜中にメールをやりとりすることもしばしばあります。

 国が違えば、人々の価値観やルールも異なります。法的側面から、異なる国の架け橋となり、相互の理解を手助けすることは、国際的な案件を扱う弁護士の役割の一つだと思います。

一番のやりがいは、誰かの役に立てる喜び

 これまでの仕事で特に印象に残っているのは、ある日本の企業を、米国の連邦倒産法の再建型倒産処理手続である「チャプター11(第11章)」と、日本の法律「会社更生法」のそれぞれに基づいて日米並行して倒産処理を行った案件です。債務者は日本の企業でしたが、主な資産であるホテルがハワイにあったため、当初はハワイの連邦破産裁判所にチャプター11手続が申し立てられました。そのホテルを譲り受けるスポンサーには米国企業がつくこととなりましたが、債務者が日本の企業であり、日本にも債権者が多数存在することから、米国だけでなく日本でも法的倒産手続きを行うこととなったのです。

 この案件では、事務所内で3名のチームを組み、かつ、ほかの法律事務所の弁護士と協力して進めました。米国側の弁護士と密に連絡を取り合い、日本法の観点から米国側にアドバイスを行ったり、米国側の弁護士に日本の倒産手続について説明し、米国側の意見を裁判所に伝えたりなど、日米協同して一つひとつ問題の処理を行っていきました。

 アメリカは契約社会といわれるように、あらゆることを細かく文書化しています。アメリカの再建計画案は120ページ以上あるうえ、それを認可する裁判所の決定書も35ページ以上に及びました。ほかにも多数の契約書、裁判所文書等があり、それらをチェックしていくのは想像以上に大変な作業でした。

 一方、日本の更生計画案は30ページ程度で、それを認可する裁判所の決定はわずか1ページです。日本側の手続において文書化されていない部分をクライアントに説明するのも私たちの仕事でした。法律の違いから生じるギャップを補いながら、米国と日本の関係者の間で何度も交渉を重ね、2年半以上かけてようやく各関係者が納得できる結果に導くことができました。

 さまざまな苦労があった分、達成感もひとしおで、チーム全員で喜びを分かち合いました。月並みですが、自分が担当した仕事が誰かの役に立てたときが、一番嬉しいですね。どんなに大変なことがあろうと「ありがとう」の一言を聞いた瞬間にすべて報われる気がします。

社会における法の重要性を実感し国際弁護士の道へ

 実は、私が弁護士になろうと思ったのは社会人になってからです。大学卒業後、外資系銀行で仕事をしていたときでした。周囲の人たちのさまざまな仕事ぶりを見ていて「一生働き続けるには、武器となる能力が必要だ」と感じたんです。そんな折、研修生としてニューヨーク本社で1年間仕事をする機会に恵まれました。

 法社会のアメリカでは、銀行の仕事でも日常的に顧問弁護士に相談しながら仕事を進めていました。実社会で法律がいかに重要であるかを目の当たりにし、弁護士を目指す決意を固めました。帰国後しばらくは銀行の仕事と並行して日本の司法試験の勉強をしていましたが、受験に専念するために退職。2年後に司法試験に合格し、弁護士としてのスタート地点に立ちました。

 弁護士の実務を経験して数年後、アメリカに留学し、ニューヨーク大学のロースクールに通いました。留学中に一番苦労したことは、やはり言葉ですね。専門的な内容の講義を英語で理解する必要がありますから。

 それでもどうにか乗り越えられたのは、確固たる目標があったことと、ともに頑張る仲間がいたからだと思います。聞き取れなかったり理解できなかったところは、講義が終わった後に留学生同士で教え合ったり、試験前にゼミを組んだりしました。そしてロースクール修了後、ニューヨーク州の司法試験に合格し、2006年にニューヨーク州弁護士登録を果たしました。

一所懸命に取り組んだ経験はあらゆることに繋がっていく

 国際弁護士として仕事をするには法律の知識や言語能力が必須ですが、それは条件の一部に過ぎません。私が必要な能力としてまず挙げたいのは「論理的思考力」ですね。そのためには良い日本語の文章をたくさん読むといいと思います。

 友達と議論するのもお薦めです。米国留学の際は「ソクラテス・メソッド」と言って、先生が学生を次から次へと指名し、さまざまな角度から意見を出し合いながら議論を発展させる形式の授業が多く行われていました。日本人は意見を主張することに慣れていないので、自分から意識して議論する場をつくるようにするといいと思います。

 また、複数の問題が絡み合った案件を一つひとつほどいて丁寧に検証する「緻密さ」や、既存の方法で行き詰まったときに状況を打破する「柔軟性」も必要です。

 高校生の皆さんは、これから未来を自分の力で切り拓いていくことができます。なりたい職業がある人はぜひその目標に向かって頑張ってほしいと思いますが、まだやりたいことがわからない人も、まったく焦る必要はありません。私もそうでしたが、目の前のことに一所懸命取り組んでいれば、徐々に自分の進みたい道が見えてくると思います。

 また、興味があること、今しかできないことにどんどんチャレンジして、いろいろなことを吸収していくことが、人間的な幅を広げて将来の仕事においても必ず役に立つと思います。

※文中敬称略。所属・役職等は取材当時のものです。
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