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営業・販売
成蹊大学 法学部
株式会社 伊勢丹 MD統括部 紳士第一営業部 バッグ&ラゲッジ バイヤー
鏡 陽介 (かがみ ようすけ)氏

2008年10月東進タイムズ掲載

“お客様が本当に欲しいもの”を提供するために、 知識と感性で商品を見抜く

商品を徹底的に好きになることで、 本物を見抜く目を養う

 高校生の皆さんは、バイヤーと聞くと、その名前から「物を買いつける」という行為を連想する人が多いのではないでしょうか。それは間違いではありませんが、私たちバイヤーの仕事は商品を仕入れるだけでなく、生産から販売までの過程にトータルに関わる幅広いものです。

 店頭に並んでいる商品はただやみくもに陳列されているのではなく、その背後には「いつ、誰を対象に、どのような特色のある商品を、どれだけ提供するのか」という緻密な計算が働いています。その計画を立てるのがバイヤーであり、いわゆる売れ筋商品を見抜くことはバイヤーの力量が一番問われるところでもあります。

 仕入れの計画書には、「どのような媒体に載せて、商品を知ってもらうのか」といったPR方法や、「店頭にどのように並べるのか」といった展開も踏まえ、商品が売り場に並ぶ時期から逆算して考えます。その準備にかける期間は、短い場合は約3カ月、商品開発から関わる場合は半年から1年を要するケースもありますね。

 現在は、バッグ&ラゲッジのバイヤーとして伊勢丹新宿店に勤務しています。バッグの難しい点は、オン(=仕事)に使用するものであるのか、もしくはオフ(=休みの日)に使用するのか、シチュエーションがさまざまであり、デザイン・機能・大きさなどが全く違ってくる点です。仕入れの際は、多様なバッグをそれぞれのアイテムごとにデータ収集・分析する作業は欠かせません。

 また新しい商品を店頭に並べるときは、お客様の声を参考にしたり、どんな人がどのような場面で使うかを詳細にイメージしたうえで決定しています。

 買い付けたいイメージのバッグが既存品の中にない場合は、商品の生産段階から関わることもあります。その際はデザインだけでなく、新素材の開発の領域にまで及ぶこともあるのです。

 「優れた商品」を見抜く眼を養うには、その商品をとことん好きになることだと思います。バッグの場合であれば素材、金具、縫製、芯といった商品の細部にまで注意を払うことで、通常なら見過ごしてしまう微妙な問題や違いに気づくようになり、それを仕事に反映させることでお客様が心から満足する商品を提供できるのです。

飛躍的に成長するきっかけとなった、 入社4年目の無謀なチャレンジ

 現職を担当する前は、ブランドスーツのアシスタント・バイヤーを5年間経験しました。当社では通常の商品に関してはバイヤーが買い付けを行いますが、半期に1度の大規模なセール期間だけはアシスタント・バイヤーにも買い付けに参加するチャンスが与えられます。

 そして入社4年目、私は思い切った企画を提案しました。専門店ですと10万円は下らない高級スーツの製作を、中国の工場で生産することでコストを大幅に削減し、約3分の1の3万円~3万5千円で販売しようというものでした。

 あまりに無謀な提案に最初は上司も戸惑っていましたが、経費を抑えながらも質を落とさない生地の入手ルートを調べ、縫製を人件費の安い工場で手配するなど、現実的に実現可能な工夫を盛り込んだ企画書を作成した結果、「やってみろ!」と背中を押してもらえました。

 生産着数は800着。さらにそれ以外に、国内生産ルートで安価なスーツを買い付け、セール向けに私が仕入れた商品数は約2万着にも及びました。

 最も大変だったのは「原価構成の分解」といって、スーツを構成する各パーツ生産費用の設定です。扱う商品がスーツでもバッグでも、一つの商品が売り場に並ぶまでの過程には生地など素材を卸す企業や縫製する工場、出来上がったものを商品化するメーカーなど、数多くの企業が関わっており、その企業すべてに利益が出るようにしなければビジネスとして成立しません。「元」と「円」の為替レートの違いで複雑になることもあり、何度も何度も練り直した末に、ようやく見通しをつけることができました。

 中国の工場には紳士服メーカー側の担当者2名と私で出向きました。生産過程をチェックしたり、現地の担当者と問題点を直に話し合えたりしただけでなく、新たなビジネス展開につながるような情報も得られて大変有意義な体験になりました。

 そのような努力を経て、セールではスタートしてからたった1週間で、仕入れた服のほとんどがお客様に支持され、大成功を収めました。この企画は仕入れ数でいえば決して大規模なものではありませんが、それによって培った、中国の工場と共同で進める新たな生産・流通経路の開拓は、今後の新たなビッグビジネスに発展する可能性を秘めていたのです。バイヤーとして自分が飛躍的に成長できるような仕事の環境を与えてくれた上司や会社には心から感謝しています。

一人ひとりの人間と向き合い、 喜ぶ顔を見られることが一番のやりがい

 バイヤーに必要な能力はいろいろあると思いますが、私が基本中の基本だと思うのは「人の話を聞く能力」です。伊勢丹のバイヤー職の大きな特色に「常に店頭に立つ」というのがあります。私も毎日午前中と夕方は必ず売り場でお客様の反応を伺います。またその際は必ず、販売担当者の話に耳を傾けるようにしています。「デザインは良いが少し重い」「仕事で使うには小さい」といったお客様からの具体的な声を把握している販売担当者との対話は、次の売れ筋商品を把握するためのヒントの宝庫です。

 話は変わりますが、実は私が百貨店に就職したのは大学時代に体験したガソリンスタンドでのアルバイトがきっかけでした。最初は、注文どおりにガソリンを給油するだけだと思っていたのですが、意識や取り組み方で変化に富んだ仕事に変わり、「接客」のおもしろさを実感したのです。そんななかで個人を対象としたリテールビジネス(小売り・小口取引)に興味を抱くようになりました。

 バイヤーとは、物を扱う仕事だというイメージが強いかもしれませんが、実は人間が相手である要素が大きく、各過程で関わる人々ときちんとコミュニケーションを図り、商品の流れを円滑にすることも大切なのです。

 仕事で出会う人間一人ひとりと向き合いながら、商品が生産されてからお客様の手に渡るまでの道筋をきちんと整備するのが私たちの仕事です。自分が仕入れた商品をお客様が納得して買ってくださる場面を見たときは「この仕事をしていて良かった」ととても嬉しくなります。

 そんな場面に一つでも多く出会うためにも、本当に価値ある商品をお客様にご提供できるようにベストを尽くしていきたいと思っています。

※文中敬称略。所属・役職等は取材当時のものです。
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