現在は、四輪駆動システムの開発を行う部署に所属し、「実験」工程を担当しています。実験は、製品の開発目標を設定する責任を負う一方、開発の最終工程として、車両の性能評価や部品の耐久試験を行うなど、製品の品質を念入りに確認します。もし実験結果が目標に到達しなかった場合、まず不具合の原因を明らかにし、どうすれば問題が解消されるか対策を検討し実行します。
クルマは背反する性能が複数あり、開発の中ではひとつの問題を解決しようとすると別の性能に影響を及ぼすことが頻繁に起こります。たとえば、エンジンの力をタイヤに伝える歯車が壊れた場合、単純に歯車を強くしてくれと担当部署に伝えても、それに伴って歯車以外の部品も設計を変更しなければならず、結果として車体が大きく重くなるという問題が起きてしまいます。そのため実験を行う私たちが、どうすれば歯車の大きさを変えずに、またほかの部品も変えずに求める性能を発揮できるか、ということを考えて提案する場合があります
一つの不具合を解決するために、仲間と共にアイディアを出し合い、お客様により良い製品を提供するという目標を共有し、ひとつの製品が完成したときは言葉にならない嬉しさがあります。こうやって、複数の部署が関わって仕事をするのは、多くの部品や性能が影響し合うクルマ開発の特色かもしれませんね。
クルマは社会に与える影響が大きく、安全・環境の面で果たす社会的責任は非常に重いものです。エンジニアはクルマが持つ負の側面を認識しなければなりません。交通事故で年間6000人以上が亡くなっている事実を当たり前と思ってはいけませんし、環境問題にも真摯に取り組まなければいけないと感じています。
「人は想いがなければそれ以上のことはできない」。これは私の好きな言葉です。想いを持ち続けることで、究極の安全・環境性能は実現できると信じています。
また、「本質を自分の力で探す能力」がエンジニアには重要です。クルマに限らずエンジニアを目指す人は常に好奇心を持って、「どうして?」「なぜ?」と突き詰めていくことを心がけてほしいですね。 お客様の期待値を上回るようなクルマをつくりたいと常々考えています。四輪駆動車は優れた悪路走破性能などが重視されますが、安全性能にも大きく貢献する四輪駆動車を世に送り出したい。確かに製品を造り上げるたびに、毎回達成感はあります。しかし、決して満足はしていません。これからも、より良いものをつくることを目指し続けたいと思っています。