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新聞業界 デジタル事業
慶應義塾大学 法学部 政治学科
日本経済新聞社  デジタル編成局 事業企画部 次長
渡辺 雄一郎 (わたなべ ゆういちろう)氏

2010年09月東進タイムズ掲載

日本の危機を救う 新しい「新聞」のカタチ

関心のある記事を自動でピックアップ!前代未聞のメディアが登場

 2010年3月、『日本経済新聞(以下、日経新聞)』がインターネット上で購読できる『日本経済新聞 電子版』を創刊した。

 通常、「新聞」といえば紙に印刷されたものを広げて読むものであり、毎月の購読料が必要であることは誰もが知る常識であろう。一方で、インターネットで取得するニュースにお金を払ったことのある人はどれだけ存在するだろうか。

 『日本経済新聞電子版』は、インターネットで最新ニュースを〝有料で.配信するという画期的な取り組みを始め、スタート後4カ月でなんと会員7万人を突破した。

 お金を払ってまで手に入れたい情報とは、一体どのような情報なのだろうか。

 この画期的な『電子版』開発の貢献者が、デジタル編成局 事業企画部 次長の渡辺雄一郎だ。長年、広告局で辣腕をふるってきた渡辺は、3年前に電子新聞を視野に入れた新事業部統括室の次長に就任し、2年の準備期間を経て『電子版』をリリースした。現在も『電子版』のマーケティングと、そこに関わる新規ビジネスの創造、企画、立案を担当している。

 『電子版』創刊による、これまでの新聞にはないメリットは何か? と尋ねたところ、「読者の属性が明確になったことだ」と渡辺は即答した。

 「これまでの新聞というのは、販売店が直接読者の自宅や勤務先に配っていたので、どんな年齢の、どんな職種の、どんな役職の方が読者なのか、正確にはわかりませんでした。しかし『電子版』では、ID取得の際に職種や所属する企業の規模、年収まで任意で個人情報を登録してもらえるので、属性がわかるようになったんです」

 その結果、『30代の読者はどんな記事に興味を持っているのか』『経営者が最も注目した記事はどれか』などターゲット別に情報を集め、それぞれの層が読んでいる記事のランキングを作成したり、読まれる記事の傾向によって登録者へのおススメ記事を紹介したりできるようになった。いわゆるマーケティングの役割はもちろん、購読者の興味領域に合わせた広告を配信できるようになり、購読者と新聞広告主の両者を満足させられる結果を導いたのだ。

日本全国に中学生投資家が誕生!?バーチャル株式で経済を知るきっかけに

 現職に就く前は、同社広告局で18年間のキャリアを持つ渡辺。そんな彼が広告職に興味を持ったのは、浪人時代だ。田原総一朗著の『電通』に出合った。あらゆる企業の黒子のように存在する代理店の仕事とは、どんなものだろう? また、同時期に偶然テレビで慶應義塾大学の「広告学研究会」を紹介する番組を見かける。「これは、おもしろいんじゃないか?」慶應合格後、迷わずに広告学研究会の門を叩き、4年間どっぷりと活動にのめり込んだ。

 先輩からコピーライティングや広告営業、イベント企画を学んでいくうちに、自分の一番の適性は広告営業だということに気がつく。

 「毎年、夏になると葉山で〝キャンプストア.という海の家を経営するイベントを行っていました。協賛会社としてハウス食品にカレーを提供してもらったり、果実生産メーカーのドールにジュースを提供してもらったり、ステージイベントのために歌手の方に出演をお願いしたりと、日々奔走していました」

 そのやりがいと楽しみを知った渡辺は、日経新聞入社後もその才能を余すことなく発揮し続けた。学生時代、キャンパス近くにある商店街の、顔なじみの店主に三千円の協賛金をお願いしていたころから、企業から桁違いの金額を承諾してもらうようになっても「基本姿勢は同じです」と渡辺は笑う。

 そんな広告一筋の彼が、これまでの仕事で一番印象に残っているのは、「日経STOCKリーグ」だ。

 このプロジェクトは、アメリカの「ストック・マーケット・ゲーム」からヒントを得た、株式の仕組みや重要性を学ぶバーチャル株式の体験学習だ。

 アメリカでは小学校から株式を学ぶ授業があり、自分が買った株の株価変動折れ線グラフを書いたり、なぜこの株が上がったのか(下がったのか)を考えさせ、レポートを書かせたりする。このような早期教育が功を奏し、アメリカの株式市場には多数の個人投資家が参加して、マーケットに厚みがあるというわけだ。

 日本だと株は「儲かるか儲からないか」というギャンブル的意味合いが強く、個人投資家はギャンブラーと見なされることが多い。

 「そうではなくて、株式というのは自分の好きな企業の株を保有して応援すること。また、株式投資を通じて日本経済や日本社会に貢献することです。こういった誤解を解くためにも、日本人も若いうちから株の本来の意味を理解する必要があるんです」と渡辺は力説する。

 その「日経STOCKリーグ」だが、「ポートフォリオ学習」というのが実にユニークな試みとなっている。

 「ポートフォリオ」とは、いろいろな株を買ってリスクを低減することだが、それを実践させる際に、学生にテーマを決めてもらうのだ。「環境にやさしい企業の株」「燃料電池に有効な企業の株」「女性のファッションを支える企業の株」など何でもいい。そのテーマに合わせた株を買ってもらい、3カ月間運用して、レポートを書いてもらう。そしてそのレポートを審査し、最優秀の学校をニューヨークに招待し、証券取引所を見学させるのだ。

 2000年の立ち上げ当時は高校生と大学生のみ対象だったものが、現在は中学生も含まれており、この10年で総勢7万人が参加した。

 「このプロジェクトをきっかけに、ファンドマネージャーになった参加者もいるんです。そんな知らせを聞くと、自分の仕事が1人の人間の将来の選択肢を広げられたと実感できますね」

 株価は経済を映す鏡だ。バーチャルの世界で株式を学び、経済を学び、『日経新聞』を読んだ学生たちは、経済をどう評価すべきか、企業をどう評価すべきか、グローバルとは何かまで一気に学ぶ。

 「そして次に、改めてニュースや情報の宝庫とも言うべき新聞を読む行為に『宝探し』のような体験を重ねるのではないかと思うんです」

今、日本が直面している危機をしっかりと見つめることが大事 でも新聞社はそれだけではダメ

 次代を担うリーダーの育成を目的としている渡辺だが、これから社会に足を踏み入れる大学生に対して、どのようにアプローチしていくかは依然として模索中だ。

 去る8月7日、世界で活躍する人材の育成と交流を目指したシンポジウム「次世代グローバルリーダーズカレッジ」の第1回が東京都内で開かれた。これは日経が運営するキャリア応援サイト「日経キャリアカレッジ」の一貫で、参加希望者には「グローバルリーダーズになるためには?」という短いエッセイを書いてもらい、それを基に選ばれた約100人の大学生や大学院生が参加したという。

 「就職活動を支援する『日経就職ナビ』というサイト事業もグループ会社で運営していますが、今回の企画は、『働くとはどういうことか』『どんなところで働くべきか』『グローバルで活躍するにはどうしたらいいか』そんなことを考えたり悩んだりしている学生に対して、小さいながらもキャリア支援を行いたいという発想から生まれました」

 第1回の「次世代グローバルリーダーズカレッジ」は、ルイ・ヴィトン・ジャパンカンパニーやSAPジャパンなど外資系企業の日本法人トップを歴任している藤井清孝氏が講師となった。彼は講演で「世界をリードできる日本発の人材育成の必要性」を訴えた。また、共催のαLeadersAcademyは、「大学生は大学生同士」「社会人は社会人同士」という縦割り社会から、「高校生が社会人と」「大学生が経営者層と」交流できる社会の仕組みを構築したい、言わば「世代を超えた寺子屋を作りたい」という考えを持っているのだという。シンポジウムは2カ月に1回のペースで開催。毎回各フィールドで活躍するグローバルリーダーズが講演し、今後は学生同士のディスカッションなども含めてメニューを多様化する予定だ。

 しかし、なぜ新聞社が人材育成にこれほどまでに熱心なのだろうか。

 「日本経済新聞は、1876年の創刊以来、ずっと最前線で日本経済を見守ってきました。そうしていく中で、日本が直面している危機を痛いほど肌で感じ、何とか手を打たなければという必死の思いが原動力です」

 渡辺はこう続ける。「日本は昔から、〝人材.で保ってきた国。しかし、さまざまな要因から、留学を希望する学生は年々減りつつあり、欧米の有名大学では圧倒的に中国人や韓国人の留学生が目立つようになってきました。海外で活躍する日本のリーダーの不在、これは未来の日本経済にとって大きな損失であり、危機だと思うんです。だから私たちでもできる限り人材育成を心がけたいと思っています」

その施策の一つが、『電子版』だ。

 「現在は『電子版』を読んでいる人のビジネスプラットフォーム※を構築中です。このサイトを基盤にして、さまざまなイベントの紹介やコミュニティの入り口など広がりを持たせ、新聞を読んだついでに〝経済イベントに参加する.とか、〝本が買える.とか、〝転職のサイトを見る.とか、あるいは〝外部と新しいビジネスを作る.とか、そんなことが日常的に行われるプラットフォームに創り上げたいんです。そうして、より多くの人材が育つ土壌になれば最高ですね」

 ※プラットフォーム……あるソフトウェアやハードウェアを動作させるために必要な、構造全体の基盤となるもの

※文中敬称略。所属・役職等は取材当時のものです。
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