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銀行 国際部門
慶應義塾大学商学部
みずほコーポレート銀行 グローバルトレードファイナンス営業部 トレードファイナンス第二チーム 米州地域 調査役
太田 成洋 (おおた なりひろ)氏

2008年03月東進タイムズ掲載

文化背景の異なるパートナーと厚い信頼関係を築き 「真のグローバル化」を目指す

関わる人すべてが納得できる結論を導き出す

 銀行の国際業務は多岐に渡りますが、特に私が担当する国際金融と呼ばれる分野は、一言でいうと、国内外のお客さまのクロスボーダー(国境を越えた)ビジネスに対して、融資・外国為替(※1)・デリバティブ(※2)などの金融商品・サービスを提供し、お金の面で支援することです。

 私の所属する部署では、世界を三つの地域、つまり(1)アジア(日本国内も含む)(2)米州(3)欧州(中東、アフリカも含む)に分けたグループごとに、お客様が抱える「貿易」に関する問題に対するソリューション(解決策)を提案しています。例えば、日本にいるお客さまが発展途上国に商品を輸出する場合、お客様は輸出代金がきちんと支払われるか不安をお持ちになります。このような場合、ソリューションの一つとして、私たち銀行が輸入者(発展途上国)に対して直接融資をするということが考えられます。輸入者は、融資された資金を輸出代金の支払いに充てることが出来ますので、お客さまはスムーズに輸出代金を回収することができます。このように、私たち銀行が海外の輸入者のリスクを取ることで、お客様が安心して輸出取引が出来るようにサポートをしています。

 お客様からのご要望を的確に把握し、各国の法制度・税制度、それぞれの案件のリスクやリターン(収益性)などを総合的に検討し、さまざまな選択肢の中から最適な解決策を提供するのが私たちの役目です。特に私は、お客さまや私たち銀行など案件に関わる全ての人の立場におけるリスク・リターンを吟味し、“WIN-WIN”、つまり関係者全員にとってメリットのある仕組みを構築していけるように心掛けています。

※1外国為替……企業間の海外取引に応じて、送金や振込みなど、海外への資金を移動させること。
※2デリバティブ……株式や金利、外国為替などの金融商品から派生して生まれた金融商品

市場の常識を覆したコロンビアの“サムライ債”

 私は米州地域のグループに所属し、メキシコやコロンビアといった中南米の国々を担当しています。これまでの仕事で特に印象に残っているのは、コロンビアでのプロジェクトですね。この案件は、2004年に当行の米州プロダクツ営業部(下の記事にご登場頂いている川瀬氏が所属)がコロンビア大蔵省を訪問し、「日本で資金の調達をしたい」との情報を入手したことがきっかけでした。

 2001年、アルゼンチン経済が破綻し、アルゼンチン・ショックと呼ばれる経済危機が発生しました。その結果、アルゼンチン国債がデフォルト(※3)となり、アルゼンチン国債を大量に購入していた日本を含めた海外の投資家が大損失を被りました。それに伴い、アルゼンチンだけでなく、ほかの中南米諸国に対する日本の投資家の見方は極めて厳しくなってしまいました。コロンビアは過去に5回、“サムライ債”(※4)を発行していた実績があったものの、2004年当時“投資不適格”として格付けされていたこともあり、日本の債券市場では、コロンビアのように投資不適格の中南米の債権はどんな投資家も買わないという状況でした。

 そのような常識を覆して日本での資金調達を実現するには、どうしたら良いかと考え抜きました。そこで、政府系金融機関で非常に信用力の高い国際協力銀行(JBIC)に債券を保証してもらい、コロンビアのリスクをヘッジ(極小化)することで、投資家が安心して“サムライ債”を購入することが出来るというストラクチャー(仕組み)を構築したのです。しかし、JBICに保証をしてもらうためには十分な説得材料が必要でした。そこで私は、この案件における三つの社会的意義を訴えて交渉に当たりました。

 まず一つ目は、国際協力。コロンビアが日本の債券市場に戻るきっかけを掴むことを支援することです。二つ目は、現地進出日系企業のビジネス環境の改善です。債券で調達された資金は、日系企業が現地で安心してビジネスを行う障害となっていた国内の交通網整備や治安改善といったプロジェクトに利用されました。三つ目は日本の債券市場の活性化です。アルゼンチン・ショック以降、中南米離れをしていた投資家を再度中南米に目を向けさせることが出来れば、ほかの中南米諸国による債券発行の機会が増え、その結果、日本の債券市場を活性化させることが出来るということです。

 同時に、コロンビアが政治・経済状況が極めて良好であり、素晴らしい国だということを投資家にきちんと知ってもらいたいと思い、在日コロンビア大使館と協力して投資家説明会を企画しました。コロンビアの大蔵省に掛け合って「日本へ来て、投資家にコロンビアの経済の安定性や将来性、素晴らしさを直接伝えてほしい」とお願いしたところ、副大臣が「ぜひ行きます!」と二つ返事で引き受けてくれたのです。また、この副大臣による投資家説明会に加え、日本での大統領の講演会も実現し、投資家のコロンビアに対する見方を変えることに大きく貢献できました。

 その結果、予想を大きく上回る購入希望が集まり、総額225億円の“サムライ債”を発行することができました。アルゼンチン・ショック以降初の中南米・投資不適格銘柄の“サムライ債”発行を実現することが出来たのです。その達成感に加え、在日コロンビア大使に「君はもう私の友達(mi amigo)だ」という言葉までかけてもらい、大使公邸にもご招待頂きました。その笑顔を見たときは、それまでの苦労がすべて吹き飛んでいくようでした。

 約1年の歳月を費やしての大プロジェクト。このときの達成感と安堵感は、一生忘れることはないと思います。

※3デフォルト……債務不履行。元本・利息の支払いが滞ること。
※4サムライ債……海外の政府や企業が日本国内で発行する、日本円の債券。

色のない「お金」を通して学べること

 私は高校生の頃から外国への憧れが強く、就職活動中は海外勤務のイメージの強い商社を希望していました。しかし就職活動中に、大学OBの当行の先輩から話を聞いたことで、それまで抱いていた銀行員のイメージが一変したのです。「商社で、『モノ』の流れや価値について追求していくのもいいかもしれない。でも、お金には色がないだろう。これを介することで、あらゆる業種やプロジェクトに関われるんだ」という先輩の言葉で、金融の可能性の大きさや魅力に気がついたのです。

 また、現在の仕事を通じて新たに中南米の魅力を知り、人間としての幅や視野を広げることができました。今後もさまざまな国のプロジェクトに参加し、日本はもちろんのこと世界に貢献できればと考えています。

 改めて自分の高校時代を振り返り、感じるのは「基本の大切さ」です。現在の英語力や論理力は高校の学習や受験勉強で培った基礎力が土台になっています。

 ビジネスでは「決まった答え」がない場面に多く遭遇します。知識や情報をベースにしながら、自分で考え、決断し、最良の結果に導いていかなければなりません。目の前に壁が立ちはだかり、八方塞がりになった局面でそれを打開する「発想力」は豊かな体験によって養われます。高校時代は勉強や部活などいろいろなことに挑戦しながら自分を成長させることが大切だと思います。

※文中敬称略。所属・役職等は取材当時のものです。
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