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競泳強化コーチ
東京理科大学 工学部 経営工学科
イトマンスイミングスクール 東大阪校 強化コーチ
西脇 正人 (にしわき まさと)氏

2011年12月東進タイムズ掲載

狙うはロンドンオリンピック!
世界トップを目指すアスリートを育成

歴代のメダリストが所属
イトマンスイミングスクール強化校

イトマンスイミングスクール東大阪校は、オリンピック競泳選手の育成に焦点を絞った強化校である。中高生から社会人にいたるまで、全国から集結したトップスイマーが日々、厳しい練習に励んでいる。オリンピック出場を目指すアスリートたちの最前線だ。とりわけ同校は、世界に類を見ない最新の設備を備えている。なかでも、選手の泳ぎを水中・水上の6方向に設置されたカメラで追尾する「泳法解析システム」はその最たるものだ。このシステムの導入により、あらゆる角度からのフォームの点検が可能となった。さらにプール横の壁にはモニターが設置されており、コーチはもちろん、選手もすぐに自らの泳ぎをチェックすることができる。つまり、これまで観察しにくかった水中での動きを、より客観的に捉えることができるようになったのである。「競泳に限らず、現代のスポーツは科学と切り離して考えることはできません」そう語るのは、同校強化コーチの一人である西脇正人だ。運動生理学に基づいたトレーニングは、もはやスポーツの現場では常識となっている。根拠もないまま、がむしゃらに頑張るという世界ではない。例えば、泳いでいる速度や休息時間、反復回数によってトレーニングの効果も変化する。持久力をつけたい場合は、確かに低負荷で長距離を泳ぐ有酸素運動が効果的だ。だが記録を伸ばすためには、逆に距離を短くした高負荷の無酸素運動に徹する。それぞれを使い分けることで初めて、より確実なスキルアップを図ることができるのだ。また、心拍数や血中乳酸値などの計測は、選手の身体状況を知る重要な手がかりとなる。また、同校では1回の練習時間を2時間程度と決めているが、これもトレーニング理論に則ったものだ。このように、科学的な意味づけが明確だからこそ、選手たちはコンマ数秒の差を縮めるための過酷なトレーニングに取り組んでいけるのだ。効率的かつ、最大限に潜在能力を引き出すには、科学の力がなくてはならないものなのだ。「科学的な数値というのは、道しるべなのです。選手にとっては、もっと頑張れるという目標になります」と西脇は言う。

まさに「同じ釡の飯を食う」生活
コーチと選手の枠を越えた人と人とのつながり

同校の大きな特長は、もうひとつある。それは選手寮を備えている点だ。もはや、練習だけすれば強くなるという時代ではない。世界に通用する選手を育てるためには、睡眠などの生活面、あるいは毎日の食事までをサポートしていく必要がある。選手の食事は、緻密な栄養管理にもとづいており、大会前に向けて各自のコンディションがピークを迎えるように計算されているという。「今やあらゆる面を総合的に考えていかないと、競技力は高まりません」だからこそ西脇たちコーチ陣は、練習以外の時間も選手たちと共有するように努めている。寮には順番で泊まり込み、選手の生活面のフォローにあたっている。そうした中で、彼らの微妙な体調の変化や悩みごとを把握していくのである。食事をともにしながら、炭水化物の摂取量を推し量ることもある。また、時には選手のほうから何らかの信号を発するときもある。そうした何気ないシグナルをきちんとキャッチできることも、コーチとしての重要な責務だ。そのためにも普段からのコミュニケーションが肝要となる。「選手の才能を伸ばしていくには、お互いが人間としてきちんとした関わりを持たなくてはいけません。そのうえで、選手の立場を理解し、どうすれば頑張れるかというところで一工夫するのがコーチの務めなのです」ここまで徹底したサポート体制を整えているスクールは、日本中を探してもそうそうあるものではない。

「苦しいとき」はチャンス到来のサイン
そう確信させたアテネオリンピック選考会での失敗

現在、西脇がコーチを務めるのは9名の若手選手だ。ロンドンオリンピックの選考会を来春に控え「トレーニングは8合目を越えている段階」であるという。西脇が担当する選手たちの目標は、まずは日本代表に選ばれることだ。「ただし、決して私ひとりですべての担当選手の面倒をみているわけではありません。ほかのコーチの助けを借りることもあります。私たちは同じ目標に向かって、チームとして戦っているのです」もちろん、強化選手のトレーニングが過酷なものであることは想像に難くない。だが西脇はその苦しさの先に、素晴らしい未来が待っていることを知っている。なぜなら、自身が過去に苦い経験からの復活を味わっているからだ。かつて、西脇と共にオリンピックを目指した選手の一人に中野高がいる。2008年の北京オリンピック日本代表として活躍した背泳ぎの選手だ。だがその切符を手に入れるまでの二人の道のりは険しいものだった。2004年のアテネオリンピックでの選考会で中野は、実力を発揮できずに敗退している。そのとき西脇は自分の甘さを悔いた。「当時の私は、もっと簡単に代表になれるだろうと高をくくっていました。ところが、オリンピックの壁がとてつもなく高いことに、そのとき初めて気づいたのです」そこから西脇が改めて得た教訓は「けっして妥協してはいけない」ということだ。もちろんそれまでも、妥協してはいない。だが当時を振り返ってみると、「頑張っているつもり」だったと西脇は言う。トレーニングに没頭するあまり、西脇自身もどんどん視野が狭くなってしまっていたのだ。世界には自分たちよりも苦しい練習を積んでいるコーチや選手がたくさんいる。だが、自分の殻に閉じこもっていては、そうした選手たちが見えなくなる。さらには、自分で自分の限界を設定してしまいかねない。だからこそ西脇は、選手が苦しんでいる時ほど「ビッグチャンスが来た」と声をかけて励ますことにしている。アテネオリンピック選考会での敗北後、妥協を許さずに突き進んだ西脇は、見事に中野を北京オリンピックへと送り出した。その成功体験があるからこそ、苦しみが大きなチャンスを生み出すことを確信しているのだ。

努力が科学の壁を超える

これまで見てきたように、コーチの役割は、選手を肉体面・精神面の双方から支えていくことである。冒頭で科学的トレーニングの重要性を説いた西脇だが、それでも最終的には「努力と根性」が結果を左右すると語る。科学は自分の現在位置を確認するためのツールであって、選手を強化するものではないというのである。「最後の勝因は、デジタルではなくアナログです。選手の精神的な強さがモノを言います」コンマ数秒を争う競泳のタイムを縮めるには、物理的な限界はある。だが西脇はあえて「限界を決めない」という。限界を決めてしまうと、そこで選手の思考が止まってしまうからだ。一番大切なことは「良い結果を出すことは素晴らしいことだけど、結果を出す為の努力はもっと素晴らしいし、尊い」ということを、心の底から選手に訴えることだと、西脇は言う。そのためには、上からモノを言うのではダメ。選手と同じ目線、ときには下からという場合もある。自分が馬鹿になってでも、選手たちの力を引き出すために最善と思われることは何でもやる。それが西脇の信条だ。さらに言えば、西脇は選手たちを心から尊敬しているという。競泳選手としての経験を持たない西脇にとって、選手たちが黙々とトレーニングに励む姿は、実は未知の領域だ。厳しい練習に耐え、逃げることなく立ち向かっていく選手たちを「すごい」と感じている。「こんなにすごい奴らと一緒にいられるんだと思うだけで、とても嬉しいものです。彼らから教えてもらうことはたくさんあります。毎日が感動の連続ですね」そんな西脇に、最後に競泳コーチの魅力を聞いてみた。「自分の感情をすべてそこに表現できる点でしょう。素晴らしい結果が出たときは嬉しいし、逆のときは悔しい。勝ったときには涙し、負けた時にはモノにあたることもある(笑)。けれども、こんなに喜怒哀楽を素直に出せる仕事はないのではないでしょうか?」オリンピックを目前に控えた指導者は、満面の笑顔でそう断言した。
※文中敬称略。所属・役職等は取材当時のものです。

	
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