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教育エンターテインメント
UCLA(University of California, Los Angeles) World Arts and Cultures
NPO法人 セサミワークショップ インターナショナル・プロダクション(国際制作部) バイスプレジデント(Vice President) エグゼクティブプロデューサー(Executive Producer)
長岡 学 (ながおか まなぶ)氏

2009年10月東進タイムズ掲載

仕事も夢も「360度展開」 作品に込められた作り手のメッセージを感じ取ってほしい

優秀な人材を束ねて 大きなプロジェクトをまとめあげる

 「セサミストリート」はこれまで140カ国あまりで放送されてきました。その制作をメインとするNPO法人がセサミワークショップです。実際には番組制作だけではなく、南アフリカのエイズ問題に取り組んだりするなど、教育や生活に関する社会奉仕活動も行っています。私が携わっているのは共同制作といって、各国の状況や教育環境に合わせた現地版のセサミストリートを作る仕事です。現地版は、その国の子どもたちが必要としている学習目標を、その国の教育者や専門家と一緒に探していくことから始まります。それをベースに番組を制作していくわけです。私の役割は、それらのプロジェクトが円滑に進むようにまとめていくこと。現地版の制作に関しては現地での折衝が必要になります。ときには、中国政府やアラブ諸国の王族とやりとりすることもあります。

 プロデューサーという仕事は自分でコンテ(絵)も描くし、台本も書くし、演出もします。なんでもやらなければならないような職種ですね。また、昔はひとつのアイデアに対してひとつのコンテンツを作ればよかったのですが、今はひとつのアイデアから「360度展開」する必要があります。例えば、テレビ、映画、インターネット、携帯、ゲーム、教室、テキストブック、あるいはWiiなどのようにゲーム端末を利用してコンテンツを配信するサービスもあります。それらをひとつずつ作っていくとお金も時間もかかります。しかし、どんなに優秀な人でも、一人ですべての仕事を担うことはできません。ですから、優秀な人財を束ねて大きなプロジェクトとしてまとめあげていくのが私の仕事になります。

英語には音がある。文字があり、 言葉になってそれが「表現」になる

 世界中で、さまざまな人たちと一緒になって番組を制作するわけですから、文化の違いに戸惑うことはたくさんあります。例えば、日本版の「セサミストリート」で運動会のエピソードを撮影したときのことです。主人公のキャラクターが競技中に転んでしまうのですが、ここで日米の考え方の違いが顕著に出ました。主人公がもう一度立ち上がって、最後まで頑張って走りきる、その姿を両親や友達が応援するという、きわめて日本的なシーンで終わるのですが、アメリカ人から見ると違和感がある。目の前で転んでしまった子どもを、どうして大人や友達が助けないのかということになるのです。

 信じられないかもしれませんが、何千万円という費用をかけたその話を放送するかどうか、ずいぶん話し合いました。結局このときは、すぐ誰かに助けてもらうよりも、自分で頑張ってやりぬくというほうが日本の美意識や文化に近いということを細かく説明し、放送に至りました。番組を作る際には、偏見や一面的な考え方を押しつけないようにすることが大切なのです。

 また、中国も日本とは違う文化を持った国です。人口も多く、生活も多様です。ですから「いじめ問題」というようにワンテーマに絞った番組を届けるのは難しい。とはいえ、中国の子どもたちにも国際性を育んでもらいたい。そういうときに大事なのは、まず自分の国のことを理解してもらうことです。そこから始まって自分自身を知り、やがて自分を表現することを学んでいくのです。その方法を「セサミストリート」を通じて伝えていく。

 英語には音があります。文字があり、言葉になってそれが表現になる。表現があってこそ、お互いを理解しあうことができる。そうすると次に創造力がつきます。そうしたらまた元に還って、今度は自分の力で音や文字を組み合わせていくことができるようになる。言葉の教育から始まって、自分自身、そして自分の住んでいる国を知ってもらう。その一番最初のきっかけのところに、私たちの仕事があると考えています。

アメリカで働く日本人とは、 どのような意味を持つ存在なのか

 夢を見つけることが難しい時代といわれますが、夢の断片は身の回りにあちこち散らばっているんですよ。先ほど「360度展開」という言葉を使いましたが、好奇心のアンテナを大きく広げておくことです。今の子どもたちはゲームや携帯電話などの情報端末と常に接しています。親御さんは眉をしかめるかもしれませんが、実はそういった中に将来にとっての大切な情報やきっかけが隠れていることがあります。コンテンツの作り手は、必ずそこに何らかのメッセージを入れているものなのです。あとで振り返ったときに、なぜ自分がそのゲームを好きだったのか不思議に思うことがあると思います。でもそれは、自分の好きなものの中から出てくるメッセージを受信して、反応していたということなのかもしれません。

 1969年の放送開始以来、「セサミストリート」は今年で40周年を迎えます。アメリカには「自分は何者なのか?」と考えている人がたくさんいますが、私も「アメリカに暮らす日本人とは、どのような意味を持つ存在なのか」ということを考えながらここまできました。日本人がアメリカで仕事をするというのは、現在でもなかなか難しいことなんです。言葉の問題だけではなく、人種差別の問題もいまだにあります。その意味では、世界中で40年間活動してきたセサミだからこそ、日本人でも受け入れられて仕事ができたのだと思います。「セサミストリート」が世界に展開していく過程で、娯楽としての楽しみだけではなく、学ぶことの楽しみを、これからも子どもたちに伝えることができれば、と考えています。そのことに、生涯をかけて取り組むべき仕事だと感じています。

※文中敬称略。所属・役職等は取材当時のものです。

	
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