全国172の大学情報を掲載!志望校選びに役立つ情報・卒業生や現役大学生の“ナマの声”満載!

CMプランナー
一橋大学 商学部
株式会社 電通 クリエーティブ開発センター ビジネスデザイン・ラボ CMプランナー
笹川 真 (ささがわ まこと)氏

2011年03月東進タイムズ掲載

つくるのは広告だけではない 企業と消費者との新しい関係性も創出する

実はCMの企画・制作は仕事の一部分 「ビジネスデザイン・ラボ」で手がける仕事とは

 2009年10月、電通に「ビジネスデザイン・ラボ」という部署が新設された。広告のあり方が多様化する中、テレビCMなどの広告以外のアプローチを含めた、より総合的で戦略的な企画を提案し、未来視点を持って、企業活動を支援することを目的とした部署だ。

 入社12年目になる笹川真は、同部署に所属する広告クリエイターである。笹川の主な仕事は、クライアント(顧客)やチームの仲間と共に、広告活動全体の設計図を描くことだ。もちろん、その中にはテレビCM、WEBサイト、ミュージックビデオの企画制作といった現場の作業も含まれているが、クライアントの新規事業立上げのサポート、ゲーム会社と協働してクライアントの新商品開発、企業の新卒採用活動のコンセプト策定、自治体の政策立案への参画など、そのフィールドは実に幅広い。「異動してからは領域的にも期間的にもクライアントにできるだけ寄り添って、いろいろな人の声を聞かせていただき、全体設計(ストーリーテリング)する仕事を目指しています」

 電通内では約20人の小さな部署で、仲間と共に広告で培ったやり方をもっと広い領域に応用すべく試行錯誤していると言う。「同じ部署の仲間の刺激を日々受けています」と笹川。一部を紹介すると、宇宙開発やキャラクターをビジネスにつなげたり、APECの総合プロデューサーをしたり、大企業の社長のプレゼンテーションの原稿や演出の担当、共通ポイントサービス「Ponta」の立ち上げ、母国ロシアから日本へ旅行客を増やすために霞が関に出入りしたり、農業をクリエーティブでビジネスにつなげ、マサチューセッツ工科大学(MIT)と人工知能を育てたりと、一端だけでもそのフィールドの広さに驚かされる。

小さなことに目を奪われていた駆け出し時代 転機となった要因とは?

 CMプランナーの仕事について笹川に聞くと「クライアントからの課題に対して提案を行う際、私の場合、絵コンテを描いて打ち合わせに臨みます。あらかじめストーリーや設定などを描きこんでおいて、それを元に、コピーライター、アートディレクターと擦り合わせていく。企画をプレゼンテーションし決定すると、制作は外部のプロダクションと共に行います」という答えが返ってきた。

 テレビCMの場合、プロデューサーやカメラマンなど、撮影に関わるクルーは膨大な人数に及ぶ。例えば東進の「全国統一高校生テスト」のテレビCMの場合、出演者だけでも250名にものぼる。CMプランナーである笹川がどれほど大きな責任を負っているかは、想像に難くない。

 「入社5年目ぐらいまでは、思い通りにことが運ばず、相当くすぶっていましたね(笑)」。駆け出しの頃を振り返って、笹川はこう苦笑いする。当時は「このコピーは俺が書いた」「先輩にアイデアが通った」といった、小さなことにばかり目を奪われていた。その一方で、自分の未熟さも痛感していた。社内ですら自分のアイデアをなかなか上司や先輩に説得できなかった。経験も浅く、アイデアも凡庸で、ロジカルな思考も持ちあわせていない自分が歯がゆかった。「もっとやれるはずなのに……」笹川が最初に配属された部署には、国内外で活躍する多くの有名なCMプランナーがいた。彼らの仕事を脇目に、活躍する先輩の華やかな仕事と自分の仕事の差に愕然とする日々。CMプランナーという同じ肩書きなのにという思いに襲われた。

 転機が訪れたのは、ある日用雑貨メーカーの防虫剤のCMを手掛けたときだ。その商品は、それまでほかの広告会社が制作していたものだった。あるとき、笹川は同期入社のアートディレクターのはからいで、メーカー側にプレゼンテーションを行う機会を得る。一度目のプレゼンでは「100点満点中5点」と宣伝部長に言われ閉口するも、二度目のプレゼンで、笹川のCMの企画を宣伝部長が採用してくれた。とんとん拍子で制作も決まり、完成したCMは評判となった。広告賞もいくつか受賞した。それ以降、上司から指名で仕事がくることも多くなった。本当にこの仕事には感謝していると言う。

 「若い頃は優れたアイデアを考えればいいと思っていました。余裕がなくて、自分のことしか考えていなかったんですね。でも、実際はそうじゃなかった。クライアントの話をよく聞き、一生懸命アイデアを出し、一緒に仕事をする人の信頼を得ることが大切なんですよね」入社以来、笹川がずっと抱え続けていたモヤモヤが、ようやく晴れた瞬間だった。

「社会が良くなる」ために仕事を通じて自分ができること

 CMプランナーとしてキャリアを重ねつつも、笹川の仕事への姿勢は変化していく。きっかけのひとつはヤマト運輸を担当するようになってからだ。同社は、近年、地域のスーパーマーケットと協力して、過疎地の買い物が不便なお客様の自宅まで食料や日用品などを配達するサービスを展開している。背景には、大手チェーン店の進出により、地域に根づいた商店の廃業が相次ぎ、その大手チェーンも撤退し、買い物すらままならない地域の高齢者の存在がある。いわゆる「買い物難民」と呼ばれる問題である。行政だけでは賄いきれないサービスを、民間企業が実現させている。

 もうひとつは、四谷大塚の「全国統一小学生テスト」の仕事。「地方の小さな町の小学生が、全国の小学生、特に東京など首都圏の小学生と学力を競う合うチャンスを作ってくれたこのテストの意義は大きい」と新潟の小さな町で育った自分の経験を振り返って語った。これらの仕事を通じて、企業の社会的意義の必要性を実感する。以来、携わる企業への貢献のみならず「どうすれば社会がもっと良くなるのか。どうすれば社会に貢献できるか」という視点も持つようになったという。「経営に関わっているというと言い過ぎですが、仕事を俯瞰して眺めて、企業や社会の根本的な問題まで考えた上で、担当する企業に喜んでいただける提案を心がけています。テレビCMとか大きな仕事があるときだけじゃなくて、些細なことでもクライアントの方のお話を聞かせてもらうと最近はアイデアが浮かぶことが多いですね」

 そんな笹川に、広告クリエイターとして求められる力を問うてみると、「ひとつあげるのは難しいですが、物事をシンプルに整理する能力でしょうか」という答えが返ってきた。「クライアントからいろいろな要望を、しかも、いろいろな人から聞くのですが、それを整理整頓する。簡単に、わかりやすいかたちに直してあげる。アイデアを考える前段階に必要な能力だと思います。そうした力は、あったほうが便利なのかもしれません。それができていないとアイデアの方向がずれちゃいますしね。そのために、クライアントの多くのことを聞きだせない仕事は、難しい仕事になります。推測で考えるのではなく、多くのコミュニケーションが必要だと僕は思います」

経験を生かして新たな挑戦に臨む

今、笹川が着目しているのはネットを使ってのドネーションの仕組みだ。簡単に言うと、個人からの融資(寄付)をプロジェクトごとに募るサービスだが、ネット、SNSの発達と並行し、海外では数年前から話題になっている。日本においてもいくつか例はあるが、まだまだ発展途上の分野といえる。「本当にお金を必要としているところに、お金が回っていくようにすることはできないだろうか?」ある仕事でドネーションのシステムを提案して以来、業務の合間をぬって調査を続けているという。「今はまだ、プレゼンするための土壌を作っているところです」そう語る笹川の目は、新たな挑戦に心躍らせているように見えた。
※文中敬称略。所属・役職等は取材当時のものです。
一橋大学に関連した職業はこちら!
一橋大学 商学部 経営学科 卒業
経営コンサルタント
山本 菜月 氏

	
マスコミ・芸能に関連した職業はこちら!
聖心女子大学 文学部 卒業
放送記者
上田 真理子 氏
明治学院大学 経済学部 商学科(現・経営学科) 卒業
メディア事業開発
大石 英司 氏
東京学芸大学大学院 修士課程終了 卒業
広告会社
白木 良和 氏
慶應義塾大学 経済学部 卒業
広告会社
福島 範仁 氏
東京大学 法学部 卒業
新聞記者
林 良輔 氏
慶應義塾大学 経済学部 卒業
コピーライター
阿部 広太郎 氏