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スポーツエージェント
慶應義塾大学 環境情報学部
IMGゴルフ ジャパン バイス プレジデント
立田 一平 (たつた いっぺい)氏

2015年10月東進タイムズ掲載

選手に最高のパフォーマンスを発揮してもらうため代理人として世界を駆け巡る!

トップアスリートの代理人として力を発揮!!スポーツエージェントってなんだろう?「スポーツ選手のエージェント」と聞くと、皆さんはどのようなイメージを持つだろうか? 例えば、お笑いタレントの「マネージャー」といえば、常にそばにいて、スケジュールの確認や移動手段の手配などをする「付き人」のような姿を連想するかもしれない。ところがトップアスリートの「エージェント」とは、そのようなものとは少し違うという。「エージェントの一番の役割は、選手の代理人として交渉ごとや契約をまとめることです。選手は競技に集中しなければいけません。その一方で、スポンサーの行事に出席したり、テレビ出演や雑誌の取材などもこなす必要があります。ですが、そうした細かいことまで選手自身で管理するのは負担が大きすぎます。ですから、なるべく競技に差し支えないように交渉したり、調整したりする。それが私の仕事になります。裏方の仕事が多いので、ちょっとイメージしにくいかもしれませんね」そう語るのは、IMGJapanのバイスプレジデントとしてゴルフ部門を統括する立田一平だ。入社以来、立田は幾多のプロゴルファーたちと、苦楽を共にしてきた。それだけに、彼らが優勝する場面に立ち会える瞬間が、この仕事の一番の喜びだという。「最近でいえば、昨年米ツアーで優勝した松山英樹選手。女子では、ベテランの大山志保選手。アメリカの女子ツアーで頑張っている宮里美香選手たちが優勝したときです。それらすべてがいい思い出ですね。彼らが苦しんでいた時期や、陰で努力していたことを知っていますから。だからこそ、勝った瞬間を一緒に味わうことができるのはとても幸せだと感じています」また、立田自らが売り込んだゴルファーが、あっという間に優勝をさらってしまったこともある。「ポーラ・クリーマーという若手のゴルファーだったんですが、初来日の軽井沢の大会でいきなり優勝してしまったんです。このときは彼女のプロフィールなどの資料を自分たちで作ってスポンサーに売り込みに行きました。こちらから選手の営業をかけていくのもエージェントの仕事の一つなんです」スポーツビジネスに携わりたい!熱い思いで飛び込んだ米球団でのインターン学生時代からバスケットボールに親しんでいた立田にとって、スポーツに関わる仕事に就くことは自然の流れといえた。大学卒業後は医療系の企業に就職したが、それもまた健康とスポーツとが密接な関わりを持っていると感じたからだ。「医療業界であれば、いずれスポーツと関わり合う機会を持てるかなと考えたんです。ところが実際に入社してみると、どうもイメージと違う。今から思えば安易な発想でした」立田はそう言って苦笑いを浮かべる。そこで立田は、思いきってアメリカへの留学を決意する。念頭に置いたのは「人脈作り」。そして自らの強みである「英語力」を生かすことだ。「海外の大学院などではスポーツマネジメントを勉強する環境が整っています。そこで2年間勉強すれば英語のスキルアップにもなりますし、スポーツ業界への人脈もできる。先行きも考えずに闇雲に退社するわけにはいきませんから、最後の1年間は、仕事をこなしつつ、留学へ向けての情報収集をしていましたね」こうした情報収集の過程で選択肢として浮かびあがってきたのが、研修生として企業で働くインターン制度だ。スポーツ業界への就職を夢見ていた立田にとって、実際にその世界をうかがい知ることのできる絶好の機会。まさに「渡りに船」だった。そこで立田は、アメリカ・ラスベガスに本拠地を置く野球チーム「ラスベガス51's」でのインターンに挑む。「マイナーリーグ(3A)のチームは、メジャーリーグのチームと違って規模がとても小さいんです。ですから自分たちでどうやってチケットを売っていくかということまで考えます。ラスベガスは日本人留学生が多い地域でしたから、彼らにチケットを買ってもらったり、あるいは当時、チームに所属していた日本人選手に協力してもらってチケット販売をしたりしました。なんでも自分たちで考えて企画する。球団オーナーと面識を得ることで人脈を広げることもできましたし、わずかな期間でしたけれども充実していましたね」ときには選手を説得することも?!エージェントに必要なのは「バランス力こうした「人と人とのつながり」が、やがて立田をIMGへと導く。同球団のなかにIMGと契約している選手がいたのだ。彼を通じて紹介を得た立田は、帰国後、さっそくIMGの日本オフィスを訪れ、インターンとして採用される。「インターン時代は、いろんな部署の仕事を体験しました。有名音楽家の来日公演のお手伝いや、元マラソン選手の高橋尚子さんの取材や撮影の現場に立ち会わせていただいたり。そんなときに、当時のゴルフ部門の上司に声をかけてもらったんです。それが入社のきっかけです」こうして立田の、スポーツエージェントとしてのキャリアが始まる。「この仕事の難しさは、スポンサーやメディア、そして選手との間に立って、どれだけうまくバランスを取ることができるかにあります。どちらか一方に偏り過ぎてはいけませんし、双方の立場に立って考え、行動することが求められます。若い頃はそのバランスがうまく取れずに失敗したこともありましたね」そもそもエージェントの仕事は、試合とは直接には関係のない事柄もある。選手にとっての「本業」はあくまで試合。テレビ・雑誌などのメディア出演やスポンサーとの折衝はもちろん重要ではあるけれども、選手にとっては副次的なものだ。「現役の選手ですから、例えば取材が入った場合なども、たいていは選手の都合に合わせていただきます。また、人気選手であればあるほど契約企業(スポンサー)からの要請も多くなりますので、選手のスケジュールやコンディションを考慮しつつ、ご契約いただいている企業側の立場にも配慮せねばなりません。あまりに選手寄りに立ちすぎてもうまくいかないことがあります。それでは、結果的に選手の評判を落としかねません。ですから、ときには選手に理解を求めるときもあります。その調整役を担うのが、我々エージェントの務めとなります」もちろん、すべて「選手のため」を思ってのことである。しかも彼らは、トップアスリートだ。それだけに常に細心の注意を払うと立田はいう。「例えば、こちらから話を切り出すタイミングには気を遣いますね。当然、試合前は避けます。あるいは私からではなく、ほかの誰かから伝えてもらったほうがいい場合もあります。いずれにせよ、いろんな個性の選手がいますから、通りいっぺんの対応ではだめです。本当に自分のことを考えて対応してくれているのかどうか、すぐに見透かされてしまいます」海外から見える日本の良さとは?夢は東京五輪のその先へ加えて、立田の仕事は、選手のマネジメントばかりではない。IMGが主催するゴルフトーナメントの企画・運営にも、立田は携わっている。例えば「ANAインスピレーション」「全英リコー女子オープン」などがそれだ。全日空とリコーという邦人企業が冠スポンサーを務める同大会は、女子ゴルフの「世界5 大メジャートーナメント」のうちの二つだ。そのため、渡米や渡英の機会の多い立田だが、それゆえに見えてくるものがあるという。「海外に出るたびに思うのですが、外の世界から見てみると日本の良さがすごくよくわかるんです。日本人の勤勉さ、あるいはサービスの質の高さ。月並みな言い方かもしれませんが、おもてなしのこころの素晴らしさをすごく感じます。逆に海外の選手が来日すると、彼らは日本のホスピタリティの高さにびっくりします。私たち日本人は、そういった点にもっと自信を持っていいんじゃないでしょうか」それでは逆に「日本人に必要なもの」は何だろうか。それは「遠慮のなさ」だと、立田はいう。「謙虚と遠慮は違うんです。謙虚である必要はありますが、海外では遠慮は必要ありません。日本では、何となく阿吽の呼吸で通じてしまうことも、海外ではそうはいきません。主張をしないと理解してもらえません」そんな立田には夢がある。一つは5年後に迫る東京オリンピックだ。「オリンピックはスポーツ事業の中でも最大の祭典です。出場選手のサポートでもいいですし、協賛企業のお手伝いでもいい。スポーツ業界に身を置くものとして、何らかの形で関わりたいですね」さらに立田は、その先へも目を向ける。スポーツ以外の分野への挑戦だ。「実はIMGの親会社は、ハリウッドの俳優や世界的なミュージシャンなどが所属する大手エージェント企業なんです。近年、スポーツの分野では日本人プレイヤーの進出が著しいですが、これからは日本人の俳優や映画監督がハリウッドで活躍することも多くなるかもしれません。そうした人たちを、自分がこれまで培ってきた経験を通じてサポートしてみるのもおもしろそうです。そうやって、自分の経験値や仕事のバリエーションを増やしていきたい。そんなことも少し考えています」国境や言葉の壁を越えて、世界を縦横に翔る立田。その姿は、これからさらに必要とされるであろうグローバルな日本人の働き方を体現している。

※文中敬称略。所属・役職等は取材当時のものです。
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