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イベントプロデューサー
筑波大学 第一学群自然学類
株式会社NHKエンタープライズグローバル事業本部 事業展開センター イベント・映像展開プロデューサー
田中 翔太 (たなか しょうた)氏

2016年01月東進タイムズ掲載

半年間の努力をもとに競い合う「3分間」その舞台づくりに持てる力を注ぎこむ

124チームが熱戦を繰り広げる「高専ロボコン」とは?1988年にスタートした「アイデア対決・全国高等専門学校ロボットコンテスト」(高専ロボコン)は、全国の高専57校62キャンパス124チームがそれぞれのアイデアと技術を駆使してしのぎを削る毎年恒例の大イベントだ。「輪投げ合戦」をテーマとした2015年大会は、ビニールホースでできた輪をポールにいち早く投げ入れる対抗戦。奈良工業高等専門学校のロボット「大和」が優勝し、大盛況のうちに幕を閉じた。その企画運営を手掛けているのが、NHKの番組制作を主な事業としている株式会社NHKエンタープライズである。「弊社には大きく分けて二つの制作部門があります。番組制作を行う部門と、イベントの企画運営やデジタルコンテンツを制作する部門です。私の場合、もともとは番組の制作をしていたのですが、異動して現在のロボコンに携わるようになりました」そう語るのは、同社でイベントプロデューサーを務める田中翔太だ。「私の担当は、ロボコンの企画運営のなかでも競技の具体的な内容とルールを決めていき、大会当日にそれに対して責任を持って実行することです。高専ロボコンでは、大会が終了するとすぐに翌年の準備がはじまります。競技課題は毎年変えていますので、今は過去に同じようなものがないか、あるいはどんなテーマにすれば技術的に難しくなるかといったことを高専や専門家の先生を交えて話し合い、アイデアを出し合っているところです」高専ロボコンは、全国の高専が参加する大規模な教育イベントである。学生たちが安全に、かつ思う存分にその力を発揮できるよう、企画運営には細心の注意が払われる。競技課題の決定までには、高専の先生を始め、工学や安全管理の専門家、テレビ局のディレクターや美術といったさまざまな分野の人たちが関わっていく。その取りまとめを担い、最終的にルールブックを作成して実際の大会で厳正に運用する。それが田中の役割だ。競技課題の選定からルール作りまでに、実に5カ月あまりをかけるというから驚く。世界に一台のロボットを作りたい!高専生の熱意と想像力に感動!とりわけルール作りに時間をかけるのは、ルールこそが高専ロボコンの成功を左右する心臓部となるからだ。「当然のことながら、学生たちはルールブックに基づいてロボットを製作します。ですから私も肌身離さず持ち歩いて読み込み、どうしてこのようなルールに決まったのか、詳細な経緯まで説明できるようにしています。このルールブックによってイベントに関わる人たちが動いていくわけです。まさに高専ロボコンのバイブルです」それだけに、田中は会議室から飛び出して、学生たちやロボコンOBの声に耳を傾けることもあるという。現場での意見から学ぶことも多いからだ。例えば、あるOBに今流行りのドローンのように空を飛ぶ競技にしてみてはどうかと聞いてみたところ、予想外の答えが返ってきたことがある。「ロボコンでは〝ドローンのように〞空を飛ぶ競技はおもしろくない」というのである。「その理由を聞いてみると、空を飛ぶロボットを作れと言われると、みんながドローンを作ってしまうからだというのです。学生たちは世界に存在しないロボットを作ることにやりがいを感じているのです。確かに、ビニールホースの輪を投げるロボットなんて世界のどこにもありません。そういう答えのない課題のほうが燃えるというんですね」だからこそ、自分たちの想像を超えるロボットが登場してくる。大会会場で、実際に予想外のロボットを目にしたときの感動はひとしおだと田中はいう。「イベントというのは、当日が勝負です。それまでいくら頑張ってきても、イベント当日が充実していなかったら意味がありません。高専ロボコンの場合、私たちが投げた課題に対して、120%の回答を学生たちがロボットという形で返してくれる。それが一番の喜びです。それを見届けるために半年という時間をかけるわけです」参加者に満足して帰ってもらうそれがイベントプロデューサーの責務参加してくれるすべての学生に「満足して帰ってもらいたい」という強い思いから、田中はイベントプロデューサーとして彼らが100%の力を発揮できるように尽力する。しかし一方で、自分のいたらなさを痛感することもしばしばだ。特に、大会前日に「ルール逸脱」が明らかになったときなどは、対応に苦慮することもある。重量やサイズが規定よりもオーバーしていたりと、その理由はさまざま。だが学生たちはけっして故意にルール逸脱をしているわけではない。もちろん、大会当日までにメールなどで質疑応答する機会を設け、こうした事態を回避する手段は取っている。だが、実際にロボットの動きを見ているわけではないから、どうしてもお互いの理解に齟齬が出てしまう。「ですが、ルールブックと照らし合わせたうえで、翌日までに修正してもらわなければいけません。彼らが半年かけて一生懸命作ってきたものに対して、そう告げるのは正直にいって大変心苦しいです」現在はイベントプロデューサーとして活躍している田中だが、もともとは自然が好きで、大学では気象学の研究に打ち込んでいた。一見、現在の仕事とは縁遠いように思えるが、実はつながりがあることを実感しているという。「研究の進め方というのは、イベントの企画運営に通じるものがあるのです。例えば、ある町の気温を測定する研究を行うにしても、たった一人ではできません。研究室の仲間や行政の担当者の方など、いろいろな人たちに参加を呼びかけ、協力を募らなくてはなりません。スケジュールや意見の調整も必要です。そんなところが今の仕事と似ているんです」淡々とした口調ながらも、本番当日には「つい大きな声を出してしまいます」と笑う田中。高専ロボコンという大舞台は、学生のみならず、田中自身にとっても大きな成長をもたらしている。

※文中敬称略。所属・役職等は取材当時のものです。
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