全国172の大学情報を掲載!志望校選びに役立つ情報・卒業生や現役大学生の“ナマの声”満載!

M&Aアドバイザー
東京大学 経済学部
三菱UFJ証券株式会社 投資銀行本部 財務開発第二部 チームヘッド
葉山 和夫 (はやま かずお)氏

2006年10月東進タイムズ掲載

M&Aアドバイザーはダイナミックに変動する 日本経済を支える縁の下の力持ち

M&Aアドバイザーは企業結婚の橋渡し役

 M&Aアドバイザーという名前を聞いても、すぐに仕事内容を想像できる人は少ないかも知れません。M&AとはMergers and Acquisitionsの略で企業の合併・買収を意味し、私たちは企業の買収や合併に伴うプロセスについてのアドバイスを行います。企業からの依頼を受けて、企業同士のM&Aのお手伝いをします。最近ではテレビでも企業買収のニュースが流れることも多くなったので、M&Aという名前だけは耳にしたことはあるのではないでしょうか。

 現在、私たち三菱UFJ証券の投資銀行本部では約100人のアドバイザーが活躍しています。案件によってグループ構成は異なりますが、大抵2~3人でチームを組んで1人あたり約5件を3カ月から1年かけて担当します。

ロンドン駐在時に見た世界経済が大きく変動する瞬間

 高校生の頃は漠然と「国のために何か役立つ仕事をしたい」と思っていたので、国家公務員を目指していた時期もあります。しかし大学に進学して経済学について学んでみると、先進諸国の経済発展過程には興味深い共通点があることを知りました。経済が未成熟な頃は官(政府)の政策を軸とした経済成長過程を経ます。そして経済が成熟すると官の役目は少しずつ減少して、自由競争で競えるほど民間企業の力や影響力が強まっていきます。「これからは民間企業が日本経済を先導していくのではないか」そう感じたのがきっかけで、日本経済の発展に貢献できる民間企業に就職しようと決意しました。民間企業の中でも、銀行ならあらゆる業界と接点を持ち、経済発展に役立つことができるのではないかと思い、銀行に入行したんです。

 入行8年目に在ロンドン欧州審査部でコーポレートファイナンスの審査をしていた時期があります。その頃の欧州では規制緩和政策のもとに、M&Aが盛んに行われるようになりました。金融をはじめ通信や電力などの多くの業界の規制が緩和されて、フランスがイギリスの企業を買収したり、国をまたいだ取引が多く行われるようになりました。

 そこで感じたことは、「この波は確実に日本にもやってくる」ということです。そのことがきっかけでM&Aに興味を持ち、新たな世界で日本経済の発展を担っていきたいと感じるようになったんです。そして帰国後は、それまでの知識を生かしてM&Aアドバイザー業務に携わるようになりました。

M&Aアドバイザーに必要なのは、豊富な知識と人間力

 M&Aを行うには、株を売買する段階に至るまで、膨大な情報収集や契約書づくりという仕事があります。最近担当した案件では、社長自ら立ち上げ、約30年かけて成長させてきた興行会社がありました。残念なことに後継者に恵まれず、売却を検討している案件でした。

 そこでまず、膨大なデータベースから売却先企業を探すために、同業種や将来売り手企業の業務を展開する予定がありそうな業種から、20社くらいをリストアップします。そして、その興行会社の社長とのディスカッションを経て、売却先候補企業を更に5~6社に絞込み、それらの一社一社に、秘密保持契約を結んだ上で提案していきます。それと並行して、財務諸表をベースに企業価値評価(株価算定)を行い、妥当な売却価格を探ります。このケースでは、ようやく、6社目でニーズがマッチする企業が見つかりましたが、これで終わりではありません。次には株式譲渡契約を結ぶために、一つひとつ懸案事項を挙げて、両者が納得するような約束事をつくるという大変な仕事が待っているんです(笑)。

 たとえば、所得隠しを見抜けなくて買収後に明らかになった場合の補償はどうするのかなど、予想できうる懸念事項をすべて洗い出して契約をします。ですから、企業価値評価を行うファイナンスや法務の知識、財務諸表を正確に読めるといった専門的な知識が重要です。

 しかし、M&Aに関する法律やさまざまな知識習得よりも難しいのが、企業代表者との折衝なんです。この興行会社の場合も、創立から社長自身が身を粉にして築き上げてきた企業だったので、初めはなかなか心を開いてもらえませんでした。「つき合いの浅い人間に預けても大丈夫だろうか」という不安がよぎるからでしょう。

 その社長からの信頼を得るために、毎日のように通い、膝をつきあわせて話し合いました。感情移入して客観的な判断ができなくなっては困りますが、何としても条件があう買い手企業を探したい一心で、できないことやわからないことは正直に伝え、全力でその企業のために情報収集や資料を作成しました。その結果、社長と信頼関係を築くことができ、売却は順調に完了しました。最後には固い握手とともに「ありがとう」という言葉を頂くことができました。M&Aアドバイザーは必要な知識を持っていることは前提ですが、総合的な人間力が求められます。

※文中敬称略。所属・役職等は取材当時のものです。
東京大学に関連した職業はこちら!
東京大学 文学部 卒業
放送記者
今井 環 氏
東京大学 理学部 卒業
研究者
唯 美津木 氏
東京大学 農学部 卒業
コピーライター
福井 秀明 氏
東京大学 教養学部 卒業
データサイエンティスト
西岡 賢一郎 氏
東京大学 理科III類 卒業
医師
尾形 逸郎 氏
東京大学 経済学部 卒業
経営コンサルタント
今岡 朋史 氏

	
金融に関連した職業はこちら!
慶應義塾大学経済学部 卒業
銀行 国際部門
川瀬 伸廣 氏

銀行 国際部門
金久 実央 氏
早稲田大学 法学部 卒業
銀行
寄高 由季子 氏
神戸大学経済学部 卒業
銀行
小島 晃 氏
横浜国立大学 経済学部 経済法学科 卒業
銀行 国際部門
加藤 修 氏
慶應義塾大学商学部 卒業
銀行 国際部門
太田 成洋 氏