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大学教授
筑波大学 第一学群 人文学類
東洋学園大学 人文学部 教授
大西 泰斗 (おおにし ひろと)氏

2007年02月東進タイムズ掲載

「文法がわかってもしゃべれない!」を 打ち破るために感覚を土台とした 新しい学習方法を構築したい

頭の中は教材のテーマでいっぱい!

 普段の私は大学で教鞭をとるほか、テレビの教育番組や講演会の講師を務めることもありますが、仕事の9割は教材等の執筆活動。私たち日本人がもっと気楽に、短時間で高い英語力を獲得できるための教材をいつも目指しています。

 単語や英文法をどんなに覚えていても、いざ会話しようしたら暗記したことが全く出てこない……なんて経験、したことありませんか? それは今までの英文法の学習が“ネイティブスピーカーの感覚から切り離されていた”からなんですよ。だからネイティブスピーカーがつまずかないところでつまずいてしまう。規則や日本語訳だけで英語をとらえるなんてできないんですよ。当たり前だよね?

 例えばon。みなさんご存じのこの前置詞、単に「~の上」という日本語で考えてはいませんか? それじゃShe looks down on me.(私を軽蔑している)とかShe cheated on me.(彼女が浮気をした)で、なぜonが使われるかわからないでしょう? 感覚として取り込まなければ、結局は付け焼き刃に終わってしまうんですよ。

 onという前置詞には、「圧力」が感じられることがよくあります。「上に何かが載っていると下にあるモノは圧迫される」、そういうところからでてくる感覚なのですが、これがつかめると、look down on, cheat onだって見えてくる。そう、軽蔑されたり浮気をされたりするとググッと心に圧力がかかってくるでしょう? そのonなんですよ。

 伝統的な英文法では説明しきれなかったさまざまな現象を感覚で解きほぐしていく――それが私の仕事の中心にあります。つまりね、「英語を勉強する対象としてみるのではなく、感覚を伴った表現ツールとして使いこなせるようになろう!」ってこと。テレビの『ハートで感じる英文法』というタイトルにはそんな思いがこもっています。

英語に対する「割り切れない思い」を解決するために

 そもそもの志望は高校教師。一番好きだった教科は国語。『源氏物語』や『風姿花伝(ふうしかでん)』といった古典をよく読みましたね。表現の意味を深く探っていく、という言語研究に必要な力の素地はそのときに養われたのかもしれません。

 それがなぜ、英語の先生になってしまったかというと、当時流行っていたTVドラマの主人公が英語の教師だったからです(笑)。また、高校時代以来ずっと英語に対してもっていた「割り切れない思い」もそれを後押ししたように思います。先ほど説明したように、ことばは単純な日本語訳や公式にあてはめることができない。山ほど暗記するだけでは英語の達人にはなれない。もっとやわらかで自然な「感触」だということを後進の学生に伝えたかったのです。私が作る教材は、イラスト、音声、映像などあらゆる利用可能な表現手段を駆使しています。ネイティブスピーカーはどんな感覚でその英語を使っているか文字だけの説明ではもれてしまうことがたくさんあるからです。学習者が自然に感覚を吸い取ってくれるような説明をいつも心がけています。

 私の頭の中は、常に教材のテーマやネタのことでいっぱいなんです。仕事の移動時間や休日に、ペーパーバックを読んだりBBCのラジオ放送を聴いたりしていても、「この動詞を使った背景にある感情を読者はわかるかな」とか「この表現グッとくるなあ、次回の例文はこんなカンジでいこう」なんて、いつのまにか仕事目線になっているんですよ。うーむ。つまらん。

『ハートで感じる英文法』はチームワークの結晶

 今までの仕事で一番印象深かったのは、やはりテレビ番組『ハートで感じる英文法』の仕事です。軽い気持ちでお引き受けしたのですが、実際は失敗の連続。最初はカメラに向かって挨拶するだけで収録が中断され、ディレクターに「もっとイキイキと!」と注意される。でもカメラは単なる物体ですからね。物体に向かってイキイキ話しかけれんでしょう、普通はさ。

 企画会議の構成メンバーは私のほかにプロデューサー、ディレクターやテキストの編集者。それぞれが他の仕事を終えて夕方からスタートすることが多く、しばしば深夜までかかって放送内容を検討します。もちろんテーマや説明手法は私が提供するのですが、「どう見せるか」はまさにチームプレー。私の説明に「その説明は、テレビじゃわかりづらくなるなぁ」などと横やりが入るのは日常茶飯事です。教師生活20年(近く)で練り上げた説明なのになぁ、と思うこともしばしばありました。だけどね、眠いのを我慢してみんなで会議しているうちに、説明がドンドン純化してくる。夾雑物がなくなってよりいい説明になってくる。人間が力を合わせてモノを作る、そのプロセスは、普段の学者生活では味わえない、大変エキサイティングなものでした。

 『ハートで感じる英文法』は予想を上回る反響があり、その続編が決定し、さらにDVDまで発売されました。この番組がこれほど支持を得たのは、視聴者に制作側一人ひとりの熱意が伝わったからだと思っています。人を動かすのは――結局のところ――人しかいない。それが私がこの番組から学んだ最大のレッスンです。

 今までの仕事で一番印象深かったのは、やはりテレビ番組『ハートで感じる英文法』の仕事です。軽い気持ちでお引き受けしたのですが、実際は失敗の連続。最初はカメラに向かって挨拶するだけで収録が中断され、ディレクターに「もっとイキイキと!」と注意される。でもカメラは単なる物体ですからね。物体に向かってイキイキ話しかけれんでしょう、普通はさ。

 企画会議の構成メンバーは私のほかにプロデューサー、ディレクターやテキストの編集者。それぞれが他の仕事を終えて夕方からスタートすることが多く、しばしば深夜までかかって放送内容を検討します。もちろんテーマや説明手法は私が提供するのですが、「どう見せるか」はまさにチームプレー。私の説明に「その説明は、テレビじゃわかりづらくなるなぁ」などと横やりが入るのは日常茶飯事です。教師生活20年(近く)で練り上げた説明なのになぁ、と思うこともしばしばありました。だけどね、眠いのを我慢してみんなで会議しているうちに、説明がドンドン純化してくる。夾雑物がなくなってよりいい説明になってくる。人間が力を合わせてモノを作る、そのプロセスは、普段の学者生活では味わえない、大変エキサイティングなものでした。

 『ハートで感じる英文法』は予想を上回る反響があり、その続編が決定し、さらにDVDまで発売されました。この番組がこれほど支持を得たのは、視聴者に制作側一人ひとりの熱意が伝わったからだと思っています。人を動かすのは――結局のところ――人しかいない。それが私がこの番組から学んだ最大のレッスンです。

当たり前のなかに潜む問題に気づくこと

 言語学者になるために必要な資質を1つ挙げるとしたら、「当たり前のなかに潜む問題を発見する力」です。少しでも心にひっかかることがあったら、虫眼鏡を取り出して「これはどういうことだろう?」とこだわり追求すること。それが言語学者に限らず研究者一般の基本姿勢だと思います。

 私が現在取り組んでいるテーマ――感覚で英文法を再構築する――は、学生時代に伝統的学校英文法を勉強していて「ことばはこーゆーものではないだろ」と思ったことが土台になっています。疑問を放置せず、自分の感性を信じ、こだわっていく。そうしたことで拓ける未来もあるのです。日常生活の中で、勉強を続ける中でふと浮かぶ疑問、ふと気づく不自然。それを忘れないでいてください。その一瞬がみなさんの輝かしい将来を支配することになるかもしれないのですから。

※文中敬称略。所属・役職等は取材当時のものです。
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