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弁護士
早稲田大学社会科学部
みのり総合法律事務所 弁護士
関根 健児 (せきね けんじ)氏

2006年04月東進タイムズ掲載

弁護士の仕事も勉強も、時には「回り道」することが大切です

高3の夏に一念発起して、弁護士への道を決意

 高校3年生の夏といえば受験勉強真っ盛りの時期ですが、私は遊んでばかりでほとんど勉強せず、将来の目的意識があまりない高校生でした。

 しかしある日、偶然観ていたテレビのドキュメンタリー番組で児童虐待の現実を知り、ショックを受けました。姉に赤ちゃんが生まれたばかりで私もとても可愛がっていただけに、「そんなひどい目に遭っている子どもたちもいるのか」と、衝撃はとても大きかったです。何か自分にできることはないだろうかと本や資料を読みあさった末、法の専門家である弁護士としてなら、この問題に深く携われると思い、弁護士になることを決意し、受験勉強を始めました。

 そして迎えた受験の結果、法学部はあえなく全滅。でも、早く弁護士になりたい一心で、法学系も学べる早稲田大学の社会科学部に入学しました。

 大学では法律の講義をたくさん受講して、法学部の講義にも顔を出すなど、講義中心の毎日でした。大学3年からはさらに勉強に力を入れ、テレビすら観ずに朝の8時から夜の10時までひたすら勉強。たまにレスリングサークルで体を動かしたり、塾講師のアルバイトもしていたのですが、周りからは「付き合いの悪いやつ」と思われて、友達は確実に減りましたね(笑)。司法試験合格後、司法修習生になってようやく修習生仲間と遊ぶようになり、「ああ、学生時代にもっと遊んでおけばよかったなぁ……」と後悔したほどです(笑)。

被告人が涙を浮かべながら「ありがとう」と言った、忘れられない思い出

 私は、弁護士になってまだ半年です。法廷に立つこともありますが、たいていは先輩の弁護士と一緒のことが多いですね。でも、初めて一人で法廷に立ったときは、とても緊張しました。法廷では裁判官も検察官もみんな無表情で、こちらが何か述べても反応がまったくないので「聞こえてないのかな……?」と不安になったほどです(笑)。

 1年目の新米弁護士は、弁護士会を通じて国選弁護人(column参照)を1年間に2度務めることが義務づけられています。私も昨年の暮れに、国選弁護人として初めて刑事事件を任されることになりました。

 被告人は、窃盗事件で捕まった50代の男性。本人も容疑を認めていて、特に難しい案件ではありませんでしたが、私は何度も拘置所に接見に行きました。こう言うとまるで使命感に燃える熱血弁護士みたいですが、単に初めてだから要領が悪く、聞き忘れたことをもう一度聞きにいったりしていたのですが(笑)。

 でも、そうして接見を重ねるうちに世間話などもするようになり、男性は「どうして盗みを重ねてしまうのか」「将来何をやりたいのか」ということを、ぽつぽつと話してくれるようになりました。そしてあるとき、「自分は10回以上窃盗で捕まっているが、こんなに何度も来てくれる弁護士は初めてだ。みんな裁判の前日に1回来るだけなのに」と言うんです。新人で要領が悪いだけの私を、熱心だと思ってくれたんですね。

 そして男性はこの裁判を経て、被害者への被害弁償をしっかり行い、最終的に刑も本人の納得のいくものとなりました。そして、裁判が終わったあとの接見では、涙を浮かべて私に「ありがとうございました」と言ってくれました。このことは私にとって、ずっと忘れられない出来事です。

 ベテランの先生なら1回で済む接見なのに、私は新人だから回り道をして、不器用に何度もやっていただけ。でも、結果的に男性との信頼関係を築き、彼の気持ちに何かしらの影響を及ぼすことができたことが、とても嬉しかったですね。

どんな勉強にも無駄なことなどひとつもない

 弁護士は、いろいろな立場や業種の方々と会い、さまざまな状況に接することができる、とてもおもしろい仕事だと思います。もし、今弁護士を目指している高校生の皆さんにアドバイスするとしたら、「たくさん勉強して、たくさん回り道したほうがいい」と伝えたいですね。

 私は大学4年のときに司法試験に合格しましたが、合格するまでの期間が短いとはあまり思っていないんです。たくさんの時間を費やして、要領よくというよりは、ひたすらがむしゃらに勉強していたほうだと思います。しかし、そのひとつひとつが無駄にはならず、自分の知識となり今の仕事にとても役立っています。

 何事も最小限の努力で済まそうとすると、その場しのぎの知識を得るだけですぐに忘れてしまいがちです。受験勉強もそうだと思うのですが、面倒だと思ってもまずは自分の力でひとつひとつ着実に理解したほうがいい。たとえ遠回りに見えたとしても、将来絶対に自分の役に立つはずです。

 あれこれ時間をかけて模索しながらも被告人との信頼関係を築けた国選弁護での一件が、改めてそのことを私に実感させてくれました。

※文中敬称略。所属・役職等は取材当時のものです。
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